漢方薬というと、小ぢんまりした店に棚やビンがいくつも並んでいて白衣のおじいさんが何かをすり潰している、というイメージの方も多いのではないでしょうか。一時期は「東洋医学はまゆつば」と誤った理解をされる風潮にあり、特に太平洋戦争以降は科学的根拠に欠けるとの見方から東洋医学を排除する向きが強くありました。西洋医学が広く普及した現代、実は最近東洋医学が見直されつつあります。病気になってからその原因を取り除く対処療法が主で、病気そのものに焦点をあてています。それに対し東洋医学はその人の体質、心の状態を重視し全体のバランスをとることで健康を保つ中国医療です。かつては「科学的に不確か」と切り捨てられかけた漢方も近年になって科学的にその効果が実証されるようになり、国内の大学の医学部のカリキュラムにも取り入れられ、欧米にもその輪は広がりつつあります。
田七人参とは中国原産の人参の一種で、セリ目ウコギ科の植物です。雲南省や広西省など中国南部の海抜1200m?2000mの山間部にしか生息せず、植えてから収穫されるまでに3年から長いものだと7年の歳月を要するため、高い薬効と共にその希少さから珍重される薬草です。人参と呼ばれますが外見は生姜に似て、紡錘状のごつごつとした形をしています。その生育年数から三七(さんしち)人参とも呼ばれます。中国では古くから漢方薬として毎日の健康に愛用され、日本ではまだなじみが薄いものの中国や東南アジアを中心に田七人参を主薬とした薬が多く存在します。現在中国では医薬品に指定されています。主成分はカルシウム・サポニン・鉄分・有機ゲルマニウム・フラボノイドなどです。止血作用と血液循環の改善作用という一見すると反対の性質を併せ持っている薬草です。
これだけの効能があるならどんな病気にも効く万能薬だと思われるでしょう。田七人参の薬効の高さとその幅の広さは確かです。しかし万能薬ではないことを理解して使用しなければならないこともまた事実です。「健康のために少しずつ長く飲む」事を目的にしているのなら、向いていると言えます。また特定の病気を持ち、その療養の一環として薬効への正しい理解と目的を持って服用するのも良いことです。ですがこれだけの薬効があると「これさえ飲めば大丈夫、不調の時はいつも田七人参」という利用者もあるのも否めません。またその希少性と薬効を謳って不当に高値を付ける業者も見られ、我々は今まさに健康熱ともいえる国民病に踊らされている嫌いがあるようです。「薬効が高いからなんにでも効く」「値が高いほどいい物だ」という偏見を捨て、田七人参を正しく使用しましょう。
加工の工程で加熱処理した田七人参のことを一般に「熱田七」と呼びます。80℃?90℃の熱を加え、焼くまたは蒸した後乾燥させて加工するのが最も多い手法です。販売店によっても認識にはばらつきがありますが、日本で「田七人参」として販売されている製品は過熱加工されたものが多いようです。加熱加工することによって衛生面での信頼性が高くなり、また生の田七人参を乾燥させるよりも加工にかかる時間が短いなどの製造上の利点があります。保存性に優れ、中国から日本に輸入される間の時間の経過に対する品質の低下が防げます。熱電子地価生田七かという差で大きく値段がことなるということはないようです。でんぷんやはちみつを加えてここから錠剤を作ることもできます。日本の田七人参市場に広く流通しているので入手しやすく続けやすい商品として多くの利用者に愛さていれる商品です。
漢方薬は植物、動物、鉱物などを原料として混合した中国医学の考え方に基づく薬です。科学的に生成した西洋医学の医薬品との最大の違いは自然由来の薬であること、ひとつの生薬がいくつもの効能を持っている場合があることです。医薬品に比べ慢性的な疾病を持っている人や妊産婦にも処方できる薬に幅があります。現在では西洋医学でも東洋医学の見直しが進んでおり、医薬品と漢方薬の併用で更に期待できる効果なども発見されています。一方で自然由来だから安心だという誤った認識も広がりつつあります。漢方薬であっても薬効がある以上副作用はあります。ただしその薬の特性を知ること、漢方薬についての知識のある調剤士に体質と病状に合った薬を適切な量と期間服用することで防げる害です。体質改善にも向いているので持病のある方にもお勧めしたい治療法です。
最近では街のドラッグストアでも漢方薬が手軽に手に入るようになり、より利用しやすくなっています。漢方薬はひとつの薬で多くの効果があり、また逆にひとつの症状に多くの薬が薬効を持つことから安易な自己判断で十分な効き目が得られないことが起こるようになりました。風邪の薬として代表的な漢方薬に「葛根湯」があります。しかし「葛根湯を飲んだけど効かなかった」という方もいるのではないかと思います。葛根湯は風邪の引き始め、特に悪寒がする、熱っぽい、体のだるさがあるという段階で効果を発揮する薬です。咳や鼻水からの風邪、既に熱が上がっている場合などにはまた別の処方が必要になります。田七人参も肝臓の不調と滋養強壮に効果がある生薬として知られますが体質や症状によっては必ずしも「肝臓=田七人参」ではないということです。それぞれの生薬の特徴を生かした活用をしたいものですね。